そう言う私だとて病人づらを

そう言う私だとて病人づらをして、世評などは、

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と涼しげにいやいやをして見せながらも、
内心如夜叉、
敵を論破するためには私立探偵を十円くらいでたのんで来て、
その論敵の氏と育ちと学問と素行と病気と失敗とを赤裸々に洗わせ、
それを参考にしてそろそろとおのれの論陣をかためて行く。

短篇集は、
いずれゆっくり拝読させて戴くつもりです。

まずは、
御礼まで。

草々。

十八日井原退蔵木戸一郎様一枚の葉書の始末に窮して、
机の上に置きそれに向ってきちんと正坐してみても落ち附かず、
その葉書を持って立ち上り、
部屋の中をうろうろ歩き廻ってみても、
いよいよ途方に暮れるばかりで、
いっそ何気なさそうな顔をして部屋の隅の状差しに、
その持てあました葉書を押し込んで、
フンといった気持で畳の上にごろりと寝ころんでもみましたが、
一向に形が附かず、
また起き上ってその葉書を状差しから引き抜き、
短かすぎる文面を小声で読んで、
淋しく、
とうとう二つに折って、
懐深くねじ込み、
どうやら少し落ち附いた気持になって、
机に向い、
またもやあなたにこんな失礼な手紙を書きしたためて居ります。

ニキビ作者に就いては、
それくらいの知識でたくさんでしょう。

もっとくわしく書いたって、
すぐ忘れてしまうのでは、
なんにもなりませんから。

この作品は、
鴎外に依って訳され、
それから、
なんという雑誌に発表されたかは、
一切不明であるという。

いつか友人がまじめくさった顔をして、
バアナアド・ショオが日本に生れたらとても作家生活が出来なかったろう、
という述懐をもらしたので私も真面目に、
日本のリアリズムの深さなどを考え、
要するに心境の問題なのだからね、
と言い、
それからまた二つ三つ意見を述べようと気構えた時、
友人は笑い出して、
ちがう、
ちがう、
ショオは身の丈七尺あるそうじゃないか、
七尺の小説家なんて日本じゃ生活できないよ、
と言って、
けろりとしていた。